
「「あれ、このしみ、いつもと違うかも?」ある日鏡を見て、そんな風に思ったことはありませんか?
若いころからある顔のしみや、美白ケアを頑張ってもなかなか薄くならないしみは、もしかしたら後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)という、少し聞き慣れない名前の皮膚の病気かもしれません。
本記事では、後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)の症状や原因について説明します。また、よく似たしみとの見分け方、治療を受けるときの注意点なども解説しています。
この記事を読めば、後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)について深く理解し、治療の選択肢が広がるでしょう。ぜひ参考にしてください。
目次
※以下、本文中の「後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)」は「ADM」と表記します。
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)とは?
ADMは10代後半〜30代の、日本などアジア人の女性に多く見られる顔の色素沈着の一種です。米粒大から数ミリ程度の小さな色素斑が、左右対称に顔に現れるのが特徴です。色は、灰色がかったものから青みがかったものまで様々です。発症しやすい部位は、頬骨を中心に、頬、額、まぶた、鼻などで、特に、両頬は点状に左右対称に現れることが多いと言われています。ただし、個人の症状にはばらつきがあり、顔の様々な部位に発症するケースも少なくありません。
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)の原因は?
ADMができるメカニズムは完全には解明されていませんが、遺伝的な理由で真皮(皮膚の深い層)に残ってしまったメラノサイトが、女性ホルモン、紫外線、炎症などの外的な刺激によってメラニン色素を生成すると考えられています。真皮(皮膚の深い層)に存在するメラノサイトに対しては、スキンケアなどの外側からのケアでは効果が期待できないでしょう。そのため医療機関でレーザー治療などを選択する必要がありますが、肝斑、そばかすと見た目が非常によく似ているため、十分な知識と経験を持った皮膚科医に診てもらうことをおすすめします。
後天性真皮メラノサイトーシスと見た目が似ているしみ

ADMは、一般的なしみや肝斑、そばかすなどと現れる部位が似ているため、間違われるケースが多々あります。典型的なADMの特徴を備えていれば見分けはつきますが、ADMと肝斑、そばかすが混ざって現れることもあり、その場合はなおさら判断がつきづらくなります。治療法もそれぞれ異なるため、自己判断で対処しようとすると、かえって悪化することもあるでしょう。気になる場合は、必ず皮膚科を受診するようにしてください。
肝斑
肝斑とは、女性ホルモンと関係があり、妊娠中や出産後にできやすいと言われるしみの一種です。頬骨周囲や額など、左右対称に現れることが多く、ADMと似たような色合いの場合があるため、見分けが難しいとされています。しかし、ADMに比べて境界がぼやけていることが多く、識別のポイントとなっています。
治療には内服薬や外用薬を筆頭に、レーザー治療などが取り入れられています。
そばかす(雀卵斑)
そばかす(雀卵斑)とは、おもに鼻や頬に現れる、小さな茶色の点状のしみの一種です。遺伝的な要素が強く、幼少期から現れはじめ、思春期に濃くなる傾向があります。そのため、10代後半から発症すると言われるADMとは出現時期が異なります。しかし、同じように、頬上部に左右対称に現れる場合があるため、見分けが難しいとされています。ADMとそばかすの大きな違いは色合いです。 ADMはおもに灰色や褐色をしていますが、そばかすは茶褐色です。そばかすに対しては、メラニン色素に反応するレーザー治療が取り入れられています。
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)におすすめの施術
Qスイッチレーザー
Qスイッチレーザーは、ナノ秒(1秒の10億分の1)という極めて短い時間でレーザーを照射し、メラニンを破壊する美容医療レーザーで、ADMを含めたしみ治療によく用いられます。
Qスイッチレーザーは、色素に吸収され、ターゲットを破壊します。その後、破壊されたメラニン色素は数日かけて老廃物として代謝され、体外に排出されます。レーザーの照射時間はナノ秒と一瞬なので、皮膚の周囲組織への熱影響が抑えられ肌への負担が少ないことも特徴です。
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レーザーがメラニン色素に反応
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熱エネルギーがメラニン色素を破壊
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破壊したメラニン色素を老廃物として体外に排出
一般的にADM治療に推奨されるQスイッチヤグレーザー(Nd:YAGレーザー)は、到達深度の異なる長短2種類の波長を持ち、表皮(皮膚の浅い層)と真皮(皮膚の深い層)どちらのメラニン色素にも有効です。短い波長は表在性のメラニン色素であるしみ、そばかす、あざなどに効果的で、長い波長は肝斑や深在性のメラニン色素であるADMや太田母斑(青あざ)の改善が期待できるでしょう。
照射の際、ゴムではじかれるような痛みが生じますが、痛みや赤みは数日で軽減するでしょう。照射後はかさぶたができる場合がありますが、自然に剥がれ落ちるまでの10~14日間程度はテープで保護することが多いです。レーザーを照射した後の肌はとてもデリケートなため、乾燥や紫外線から守るスキンケアが非常に重要です。
ピコ秒レーザー
ピコ秒レーザーはピコ秒(1秒の1兆分の1)という、極端に短い時間でレーザーを照射し、狙ったメラニン色素を音響衝撃波で細かく破壊する美容医療レーザーです。破壊されたメラニン色素は、徐々に体外に排出されるため、結果としてADM、しみなどの色素沈着の改善を図ることができるでしょう。
ピコ秒レーザーが起こす音響衝撃波は非常に強力ですが、狙った範囲以外にはほとんど影響を与えず、肌への負担が最小限に抑えられることも特徴です。
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レーザーがメラニン色素に反応
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衝撃波でメラニン色素を細かく粉砕
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粉砕したメラニン色素を老廃物として体外に排出
ピコ秒レーザーは表皮(皮膚の浅い層)の肝斑やしみ、あざだけでなく、真皮(皮膚の深い層)のADMにも働きかけることができます。さらに、メラニン色素の黒や茶色だけでなく、赤や橙、青や緑といった多様な色素にも反応するため、タトゥーやアートメイクの除去治療にも利用されています。
また、真皮(皮膚の深い層)にレーザーが届くと、音響衝撃波の影響でコラーゲン産生が促進されるので、皮膚の弾力向上や肌質の改善も期待できるでしょう。
ピコ秒レーザーは照射時間が短いため、痛みや炎症が生じにくい施術とされています。
ただし、照射後の肌はダメージを受けやすくなっているので、ていねいな保湿と紫外線対策を心がけ、患部をこすったり刺激を与えたりすることは避けて過ごしましょう。
まとめ
